こんにちは、メリ爺です。
深夜のオフィス。あるいは自宅の書斎。
あなたは今、画面が白くフリーズして「応答なし」と表示されたExcelを見つめながら、冷や汗をかいていませんか?

「このマクロが動かないと、明日の請求書が出せない……」
そんな恐怖から解放されたくて、今話題のAI開発に希望を見出しているのかもしれません。
「AIに指示(プロンプト)さえ出せば、魔法のようにシステム開発ができる」と。
もしそう考えているなら、少しだけ手を止めて、プロである私の話を聞いてください。
その「魔法」への期待だけで走り出すと、あなたがこれから作るAI内製開発のシステムは「3ヶ月でゴミ化」する可能性が極めて高いからです。
かつて、前任者が残した「秘伝のタレ」のような複雑怪奇なVBAに、頭を抱えた経験はありませんか?
中身がブラックボックス化し、触れば壊れ、直そうにもどこが悪いのか分からない。
AI開発でも、準備なしに進めれば全く同じことが起きます。いえ、AIの方がコードを書くスピードが圧倒的に速い分、崩壊の速度も桁違いです。

失敗の原因は、あなたのプログラミング技術ではありません。
「要件定義(ようけんていぎ)」の欠如です。
今回は、非エンジニアがAI開発(AI内製開発)をする際に絶対に避けて通れない「要件定義とは何か?」を解説します。
さらに、専門知識ゼロでもChatGPTやClaudeを使って「要件定義書(設計図)」を作るプロンプトと、プロンプト公開の考え方まで、まとめてお伝えします。
要件定義とは「システムの背骨」である

システム開発における要件定義とは、一言で言えば「背骨」です。
多くの人は、AI開発を始めるとすぐに「どうやって作るか(How)」を気にします。
「Pythonがいいのか?」「どのライブラリを使うのか?」といった、道具や手段の話です。
しかし、要件定義はもっと手前。
「何を作るのか(What)」そして「何のために作るのか(Why)」を決める、最も人間臭い工程です。
- このシステムで、どの業務を何分短縮したいのか?(大義名分)
- 誰が、いつ、どんな状況で使うのか?
- 絶対に外せない「譲れない機能」は何か?
これらを記したドキュメントが「要件定義書」です。
ここがグラグラしていると、どんなに優秀なAIが美しいコードを書いても、そのシステムは自重で潰れてしまいます。軟体動物が直立できないのと同じです。
【ワンポイントうんちく】
要件定義って「職人の勘」みたいに見えますが、実は世界には要件定義(要求仕様)の書き方そのものを標準化しようとした流れがあります。
つまり、要件定義は気合い論ではなく、再現性を上げるための技術(要求工学)として育ってきた領域なんです。
あなたが今やろうとしているのは、雰囲気で資料を作ることではありません。「後から誰が見ても同じ判断ができる形にする」という、立派なエンジニアリングです。
しかもAI内製開発だと、この「誰が見ても」は他人だけの話ではありません。
AIは同じシステムのようで、実質毎回担当者が入れ替わっているのと同じです。だからAIに対しても、自分に対しても判断基準を残す必要がある。
数週間後の自分が読んでも、次にChatGPTやClaudeへ同じプロンプトを投げても、同じ判断ができる。それが「背骨」です。
「背骨」がないシステムは死ぬ(3ヶ月でゴミ化する)

システムを「作る」ことより難しいのは、それを「長く使い続ける」ことです。
背骨がしっかり組まれたシステムは、機能追加や修正で多少ツギハギだらけになっても、軸がブレていないため20年、30年と使われ続けます。
皆さんの会社の古い基幹システムが、文句を言われながらも生き残っているのは、最初の設計者たちが作った「背骨」が強かったからです。
逆に、背骨がないシステムはどうなるか。
「やっぱこれもできる?」「あれも追加して」という思いつきの修正一つで全体が歪み、謎のエラーを吐き出し、最後は誰も怖くて直せなくなります。
これが「システムの崩壊」です。
AI開発ではコード生成が速い分、崩壊も速い。気がついた時には「3ヶ月でゴミ化」します。
あなたがExcelやVBAで味わったあの絶望を、AI内製開発で繰り返してはいけません。
社内システム・自分用ツールにおける「適正な温度感」

「要件定義が重要だとは分かった。でも、大手SIerが書くような分厚い資料なんて作れないし、読みたくもない」
そう思った方、安心してください。
私たちが目指すのは「AI内製開発」です。数千万円かけてベンダーに発注するわけではありません。
契約書代わりの、事細かな仕様書は不要です。
重要なのは一点だけ。
「システムの旗(ゴール)」を立てること。
これだけです。
開発中にAIが迷子になったとき、「細かいことは任せるが、目指すのはあっちだ」と指し示すための旗。
この旗がないと、AIは“それっぽいコード”を量産し、結果として「3ヶ月でゴミ化」ルートに乗ります。
【解決策】要件定義書は「AIへのインタビュー」で作らせろ(プロンプト公開)

とはいえ、システム開発未経験者がいきなり「旗を立てろ」と言われても難しいでしょう。
「要件定義とは何を書けばいいのか?」その勘所は、数多くの失敗と経験がないと分かりません。
ここで、多くの情報発信者が教えていない、とっておきの方法をお伝えします。
要件定義そのものを、AIに作らせるのです。
あなたが頭を抱えて、真っ白なWord画面に向かう必要はありません。
以下の要件定義プロンプト(AIへの指示文)を、ChatGPTやClaudeにコピペして使ってください。

実際の会話例:愚痴を言うだけで要件定義書(設計図)ができる

この要件定義プロンプトを使うと、具体的にどのような会話になるのか?
実際のログを見てみましょう。ここでは演出なしの「AIの生の反応」をそのまま掲載します。
あなたは「専門用語」を使う必要はありません。日頃の業務の「愚痴」をこぼすだけでいいのです。
承知いたしました。それでは、プログラマーに渡せるレベルの要件定義書を作成するために、順を追ってインタビューさせていただきます。
最初の質問です。
今回作ろうとしているシステムは、どのような業務を解決するためのものですか?
(例:「毎月の請求書発行が大変なので自動化したい」「在庫の数を管理したい」など、ざっくりとした目的や、今の困りごとを教えてください)
毎月の請求書作成が辛いです。取引先から送られてくるCSVの形式がバラバラで、それを手作業で直すのに3時間かかってます。これを自動化したいです。
ありがとうございます。
「バラバラな形式のCSVデータを整理して、請求書作成の手作業(3時間)を削減したい」という明確な目的ですね。
2つ目の質問です。
そのCSVを取り込んだ後、最終的にどのような形になればゴールですか?
(例:社内で決まったフォーマットのExcelファイルに転記したい、あるいはPDFの請求書として出力したい、など)
社内で決まった「月次集計用.xlsx」というExcelのひな形があります。その特定のシートのセルに、計算結果が転記されていればOKです。
見ての通り、AIはあなたの発言を理解した上で、「じゃあ次はこれを教えて」と誘導してくれます。
あなたはAIの質問に答えるだけ。対話が終わる頃には、驚くほど整理された立派な「要件定義書(システムの背骨)」が出力されています。
うんちく:『要件』と『仕様』を混ぜると、AIが迷子になる

ここで、現場のExcel職人がハマりがちな落とし穴を一つ。
要件定義の話になると、だいたいの人がこう言います。
「要件って、つまりこういう画面で、こういうボタンがあって、こういう手順で……」
それ、気持ちは分かります。
Excel文化では「画面(シート)=業務」になっていることが多いので、頭の中で業務を思い出すと、自然にUI(見た目)の話から入ってしまう。
ただ、AI開発(AI内製開発)では、ここで混ぜると事故ります。
『要件』と『仕様』は似て非なるものだからです。
- 要件(What / Why):何を達成したいか。何のために作るか。守るべき制約は何か。
- 仕様(How):それをどう実現するか。画面、ボタン、処理手順、技術選定。
要件が薄いまま仕様だけが先に立つと、AIはどうなるか。
あなたが「それっぽいUI」を口頭で語っただけで、AIは全力でコードを書き始めます。
そして出来上がるのは、見た目は立派だが目的がズレているツールです。
例でいきます。
悪い指示(仕様だけ)
「CSVを読み込んで、ボタン押したら整形して、Excelの指定セルに貼り付ける画面を作って」
これだと、AIは「どのCSVが来ても動くこと」を優先して、無駄に複雑な分岐や例外処理を盛ったりします。
結果、メンテできない化け物になりやすい。つまり「3ヶ月でゴミ化」します。
良い指示(要件から入る)
「取引先ごとにCSV形式がバラバラで、毎月3時間の手作業が発生している。
ゴールは『月次集計用.xlsx』の特定シートが埋まっている状態。
対象はA社〜D社の4パターンで十分。形式が増えたら追加できる構造が欲しい。
誤った貼り付けをすると請求ミスになるので、取り込み前に差分チェック(件数・金額合計)を必ず出したい。」
これが「旗」です。
AIは旗が立つと、迷子になりにくい。
逆に旗がないと、AIは“できること”を盛り始めて、あなたの業務から離れていきます。
要件定義の価値は、書類の厚みではありません。
AIが暴走しそうになった時に、首根っこを掴んで現実に戻すための杭です。
この杭があるだけで、AI開発の再現性が一気に上がり、「3ヶ月でゴミ化」を防げます。
人間が絶対にやらなければならない「たった一つの仕事」

この方法を使えば、要件定義書の叩き台や、要件定義プロンプトによるインタビュー設計はAIがやってくれます。
しかし、AIには絶対に代行できない、「人間だけの聖域」とも言える仕事が一つだけ残ります。
それは、「熱量(想い)」の言語化です。
「なぜ、今このシステムが必要なのか?」
「毎月末のこの集計作業の、どこに一番腹が立っているのか?」
「この作業が自動化されたら、空いた時間で本当は何をしたいのか?」
この「大義名分」だけは、あなたの心の中にしかありません。
ネットの海をどれだけ探しても落ちていない、あなただけの真実です。
AIとの対話(プロンプト)で、ぜひこの「泥臭い想い」をぶつけてください。
「楽をしたい」「早く帰りたい」「ミスをして怒られたくない」。そんな動機で構いません。
AIは単なるツールではなく、あなたの思考を映し出し、拡張するためのパートナーです。熱量が伝われば、AIが出力する要件定義書(設計図)はより強固なものになります。
まとめ:要件定義とは「3ヶ月でゴミ化」を防ぐための技術だ

要件定義とは、システム開発の「背骨」です。
ここをサボって、いきなり「コードを書いて」とAIにねだるのは、基礎工事をせずに高層ビルを建てるようなもの。
待っているのは時間の浪費と、「3ヶ月でゴミ化」したシステムを前にした挫折です。
難しく構える必要はありません。
この記事で公開した要件定義プロンプトをコピペして、ChatGPTやClaudeと雑談するように「作りたいもの」を語ってみてください。
自分の頭の中にあった「ぼんやりとしたアイデア」が、AIによって言語化され、「明確な要件定義書(設計図)」に変わる瞬間。
この霧が晴れるような快感こそが、AI内製開発の第一歩であり、醍醐味です。
しっかりとした背骨さえあれば、あなたのシステムはビジネスと共に成長し、長く使える資産になります。
「3ヶ月でゴミ化」を防ぐ準備は、もう整いました。


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